転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「テミーの言うとおりだ。我々の予想通り、正妃一派の仕業で間違いないだろう」

 メル兄さまが、大仰に頷き返した。そして、私の方をくるりと向く。
 私と同じ栗色の髪の毛に赤い瞳のメル兄さまは、四人の兄さま達の中で、一番頭が良い参謀タイプだ。

 他の兄さま達はきっと、メル兄さまが一番、私にわかりやすく説明してくれると思っているに違いない。
 だって、さっきからアレ兄さまも、ウェスタ兄さまも、じっとしているんだもの。

「イリス」
「はい、メル兄さま」
「イリスを狙ったのは、正妃の一派だ。うちとは派閥が異なる。あちらは第二王子を王太子にしようとしているんだ」

 ということは、我が家は側妃派ということなのか。
 さっきの話を聞くと、まぁ正妃も側妃もどっちもどっちといえる。
 それでも、国際的な約定の元結んだ結婚を、我が家が支持しないのはどうしてだろう。

「側妃はね、私の従姉妹なのよ」

 なるほど。
 お母さまの実家は公爵家だから、側妃の母君が、お母さまの伯母か叔母というわけだ。
 それならば、我が家が側妃派になるのもうなずける。
 
「つまり、側妃殿下の実家であるホムルグ伯爵家は、我が家と同じ派閥ということなのですね」
「ええ。そもそもそういう縁が最初。まぁ、あの子も好きで側妃になったわけじゃないから」
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