転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

第11話 婚約者との再会

 エーグル辺境伯領から王都までは、馬車で二週間ほどかかる。
 馬車の場合は。
 ただし走竜と呼ばれる竜が牽く馬車──竜車か──であれば、ほんの一晩ですむ。

「走竜を使いこなせるのは、うちの領の人間だけだけどね」

 例えるならば、在来線と新幹線ほどの差がある。
 そして、走竜はスピードが速いので、ほぼ地面に車輪がついていない。
 なので妙な揺れもなく、快適なのだ。

 昨夜お爺さまが領地に戻ってきて、私たちが朝にはもう領地を出た。
 久しぶりにお会いしたお爺さまと、たくさんおしゃべりしたかったけど、こればかりは仕方がない。

 お爺さまったら、私のこと離そうとせずに「婚約なんて辞めちまえ」なんて言い出すし。
 まぁね、私も第一王子と婚約する危機を乗り越えられるなら、この婚約はなくなっても別に良いかなとは思ってるけど。

 でもそれは、他の人との婚約もない、という前提だ。
 知らない人と婚約するなら、デリーとの方が良いもん。

 前世の記憶が戻る前だったし、一桁台の年齢のときだったから、恋の好きとは違うかもしれないけど、でもデリーのことは好きだなって思ってたしね。
 やだ。
 自分で思い出して少し恥ずかしくなっちゃう。
< 47 / 168 >

この作品をシェア

pagetop