転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「着いたみたいね」

 お母さまの声に、意識はこちらにもどる。
 私たち女性陣は竜車で、男性陣は走竜に乗って私たちの周りを走っていた。
 併走していたウェスタ兄さまが、私たちの窓をノックしたのだ。

「母上、イリス。あと数分で王城です」
「ありがとう。イリスも準備なさい」

 今回はタウンハウスには立ち寄らず、直接王城に行くことになっている。
 部屋を一室借りて、そこで準備をするんですって。
 お婆さまは今回出席しないそうなので、終わってからタウンハウスでの再会になる予定。

 そうこうしているうちに、王城に。立派な門を通り抜ける。
 王城の車寄せには、まだ早い時間だからか他の馬車は到着していないみたい。

 扉が開き、お母さまはお父さまが、私はウェスタ兄さまがエスコートしてくれて降りる。
 長い廊下を進んで、支度のための部屋に入ると、ようやく一息つけた。
 あーっ、疲れたっ!

    ***

 ドレスアップして、家族でお茶をしているところでノックがされる。
 お父さまが促すと扉が開き、なにやらキラキラしたお顔の少年が入ってきた。

 え、めっちゃ美形。

 黒い髪はただ真っ黒、というよりも、外から入る太陽の光の加減で、玉虫色に光る。烏の濡れ羽色ってこういうことをいうのかしらね。
 それに黒い瞳は、まるで黒曜石のよう。
 目鼻立ちもすっきりしていて……。

 ん? この顔。

「もしかしてデリー?」
< 48 / 168 >

この作品をシェア

pagetop