転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「……思い出した」
私の前世を。ガーデナー、庭師として働いていた私は、公園の草木の整備や依頼のあった豪邸の庭のセッティング、果てはコンテストの審査員なんてものもやっていた。
家のベランダではプランターでのガーデニングをして、犬を集めるゲーム、それに森や島に家を作り農作物を育てたりするゲームをすることが趣味だった。
「前世というからには、死んだ……んだよね。でもまぁ、天寿を全うしたのかな。後期高齢者になった記憶ないけど」
脳内に復活した記憶は、三十歳の誕生日直前くらいだ。
「それがその、私の手違いで、亡くなってしまって」
「手違いで」
そんな、ちょっと書類間違えました、みたいなノリで言わないで欲しい。
「それで申し訳ないと思って、前世のあなたの世界で人気だった乙女ゲームの世界に転生させてあげたんだけど、設定をミスったみたいで、イリスちゃんの前世の記憶が戻らなくてねぇ」
肩をすくめる神さまを、思わず呆れた顔で見てしまった。
「私の前世の記憶が戻らないと、なにかダメなんですか?」
「せっかくだから、乙女ゲームの世界を堪能して貰いたいじゃない?」
「いや、その前に私、乙女ゲームってやったことないんですけど」