転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 小さい頃から、とお父さまが言うということは、もしかして婚約が前提で我が領地にきていたのかしら。

「いや、そういうわけじゃないんだ。だが、彼が小さい頃うちの領地に来たいと言ったらしくてな。我が家なら安心ということもあり来ていたんだ」
「デリーが……」

 王都に住んでいると聞いたことがあったので、きっと辺境伯領の自然に触れてみたくなったのだろう。
 小さな男の子であれば、広い場所でのびのびと遊べるのは、魅力的なものだ。

 我が領地のことをどうやって知ったのかは分からないけれど。
 家庭教師にこの国の領地のことでも聞いたのかもしれない。

 それからしばらく皆で歓談しているうちに、パーティ開始の時刻となった。
 この国では、辺境伯は公爵と侯爵の間に位置している。

 パーティなどへの入場は、下位貴族からの序列だと来るときにおしえてもらった。
 なので、我が家は後半の順番だ。

「エーグル辺境伯家の皆様、ご準備をお願い致します」

 案内人からの声がけで、立ち上がる。
 お父さま、お母さま。

 そして三人のお兄さまが続き、私のエスコートはウェスタ兄さま。
 実はデリーがエスコートに戻ってくるのかと、一瞬期待したけれど、さっきそんなことは言っていなかった、と思い出した。
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