転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 ということは、この流れは。

「第一王子デルピニオの婚約を発表する」

 陛下のその言葉に、会場がざわめく。
 なるほどね。だからこのパーティの前に、私の婚約が決まったというわけか。

 いや、あのその。
 これもう、逃げられない状況じゃない?

「イリス」

 デリーが私を呼ぶ。ほら、ってウェスタ兄さまが私の背をそっと押す。
 ここまできたら、腹をくくるしかない。
 ゆっくりと歩き出し、前に向かう。

 前からは、デリーが階段を降りて迎えに来た。
 彼の手を取る。
 そうして一緒に階段を上がりきると、大きな拍手が起きた。

「イリス・エーグル辺境伯令嬢だ。これは王家と辺境伯家の強い繋がりの始まりとなるであろう」

 国王陛下の言葉の後に、デリーと私が礼をする。
 それにあわせて、楽団が音楽をかけ始めた。

「今日はデルピニオ達が最初にダンスを踊りなさい」
「ご配慮、ありがとうございます、陛下。──さ、イリス」

 彼に誘われ、フロアに降りていく。
 そうして、ゆったりと流れる音楽にあわせて、彼と踊り始めた。
 
 これでようやくデリーと会話ができる。
 私は、小さな声で話しかけた。

「デリーって……第一王子だったのね」
「イリスは忘れてたの?」
「え?」
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