転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
冷静に考えてみよう。
神さまは乙女ゲームのことを言ってたけど、今の私は、その乙女ゲームのイリス・エーグルとは違う。
前世の記憶ももっているから、ヒロインだかなんだかが出てきたとして、対処のしようだってある。
それに、そもそも悪役令嬢になんてなるつもりもないし、興味もない。
で、あれば。
「デリー。いえ、デルピニオ殿下」
そう名前を言い直すと、デリーは少し緊張した表情を浮かべる。
私よりもほんの少し背の高い彼の頬に手を伸ばした。
伝わる体温は少し冷たい。
それだけ、彼が緊張していることが伝わってきた。
「私はあなたの婚約者になれたこと、嬉しく思っているわ。ただ」
「ただ?」
「自分がゆくゆく、妃と名のつく何者かになりたいかと言われると」
そこで曖昧に笑えば、彼は一つ頷いた。
「ありがとう。イリスの気持ちは良くわかったよ。大丈夫」
「大丈夫?」
「僕は、イリスがいてくれればそれで十分ってこと」
そうして、そっと私の頭頂部に唇を落とした。
「ちょっ、デッ」
「婚約者だもん。いいでしょ?」
いたずらっ子のような顔で笑う。
そうだ。
彼のこの表情。
私たちが領地で一緒に過ごしてきた数年間。
ずっとこのいたずらっ子の笑顔を、見続けてきたんだった。
「さぁ、そろそろ中に戻ろうか。今度は僕が、領地に遊びに行くから」
「ほんと? だったら、デリーが来るまでに見せたいものの準備をしておくわ」
今庭で作っている作物を、領地でうまく流行らせる。
それを、自慢しないとね。
神さまは乙女ゲームのことを言ってたけど、今の私は、その乙女ゲームのイリス・エーグルとは違う。
前世の記憶ももっているから、ヒロインだかなんだかが出てきたとして、対処のしようだってある。
それに、そもそも悪役令嬢になんてなるつもりもないし、興味もない。
で、あれば。
「デリー。いえ、デルピニオ殿下」
そう名前を言い直すと、デリーは少し緊張した表情を浮かべる。
私よりもほんの少し背の高い彼の頬に手を伸ばした。
伝わる体温は少し冷たい。
それだけ、彼が緊張していることが伝わってきた。
「私はあなたの婚約者になれたこと、嬉しく思っているわ。ただ」
「ただ?」
「自分がゆくゆく、妃と名のつく何者かになりたいかと言われると」
そこで曖昧に笑えば、彼は一つ頷いた。
「ありがとう。イリスの気持ちは良くわかったよ。大丈夫」
「大丈夫?」
「僕は、イリスがいてくれればそれで十分ってこと」
そうして、そっと私の頭頂部に唇を落とした。
「ちょっ、デッ」
「婚約者だもん。いいでしょ?」
いたずらっ子のような顔で笑う。
そうだ。
彼のこの表情。
私たちが領地で一緒に過ごしてきた数年間。
ずっとこのいたずらっ子の笑顔を、見続けてきたんだった。
「さぁ、そろそろ中に戻ろうか。今度は僕が、領地に遊びに行くから」
「ほんと? だったら、デリーが来るまでに見せたいものの準備をしておくわ」
今庭で作っている作物を、領地でうまく流行らせる。
それを、自慢しないとね。