転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 前世でガーデナーをしていたときは、あちこちの地域に派遣され、その先で庭を整備したり美しく装うことがメインの仕事だった。
 その一方で、その地域の農家の方とふれあい、いろいろな知識を授けて頂いたりもしていた。

 この世界では、そうした知識を使いつつ、農家さんと一緒に収穫したりもできるし、もう最っ高!
 できることなら、一生ここでこうして過ごしていたい。

 この世界って、独身女はまだあまり許容されてないんだよねぇ。
 くっ……。いや……、そもそも私婚約者がいる身ではあるけどさ。

「お嬢さま。お戻りになったら、デザイナーのジョニュア女史とのお打ち合わせですよ」
「そうだったわね。今日はなんの打ち合わせ?」
「なんでも、ドレスをご発注頂いたそうで、それの」
「誰の?」
「お嬢さまのものに決まってます」
「誰からの?」
「第一王子殿下にございます」
「でしょうねぇ」

 第一王子殿下。デルピニオ・ハッグス。
 我が家ではデリーと呼ばれている、私の婚約者だ。

 神さまが教えてくれた乙女ゲームでは、私とデリーは婚約破棄することになるらしいけど、どうにもそんな雰囲気は皆無。
 だって──。
 
< 62 / 168 >

この作品をシェア

pagetop