転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「ウェスタ兄さまの身の安全?」
「気にしなくて良いのにねぇ」

 苦笑いを浮かべながら、ウェスタ兄さまは

「フェデル、あれは大丈夫だ」

なんて一言だけ残して、奥へと去って行った。
 
 フェデルを見れば、彼女は黙って首を横に振った。深追いするな、という合図だ。
 よくわからないけど、まぁいいか。

「デリー様。このあとデザイナーが参りますので、お時間は短めでお願い致しますね」

 フェデルはそう告げると、一番近くの部屋の扉を開け、近くのメイドにお茶の指示をだす。
 仕事ができる女、フェデル。

 私たちはソファに並んで座る。デリーが私の手をずっと握っているのは、まぁ気にしないでおこう。
 この世界の婚約者のルールがわからないので、これが普通なのかもしれないし。

「イティゴに限らず、フルーツを瓶の中にいれて、そこによく洗った発酵グーツ石を三つ入れて半日待つだけ」
「発酵グーツの石?」

 それは初耳だ。
 石関係は、本を調べていない。

「発酵グーツってのは、最近アジェスティ王国で発見された石なんだ」

 アジェスティ王国と言えば、数年前まで、我が国と戦っていた国だ。

「宝石にならないクズ石として、廃棄されているんだけど、それをここの領地でうまいこと回収なり低価格で輸入ができれば」

 デリーの言葉に、目の前が広がる。
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