転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「あら、わかってるんでしょ? 今はまだ立太子していないけれど、第一王子が立太子するだろうって」
「その……あの……でも……」

 なんとなく目を逸らしていた現実をガツンと突きつけられた。
 そうか。
 第一王子は王位継承権が第一位で、つまりは国王に一番近いわけで、そして私はその第一王子の婚約者であるわけで。
 ってことは、次期王妃ってわけか。

 いや。
 いやいやいやいや、無理でしょ。

「大丈夫よ。イリスは多国語を読み書きできるのだから」
「まぁ! そうなのでございますか? それだけでもう、王妃として十二分ではございませんか」

 そう。
 たぶん、この世界であれば、多国語を読み書きできるなんて、とんでもない才能なのだ。
 そういう意味でも、王妃候補としてはちょうど良かったんだろうなぁ。

「でも、話すのはまだ苦手で」
「教師が付いてだいぶ話せるようになってるじゃない」
「そう……ですけど……」
  
 でも私、あんまりその……。重い責任とかは興味ないなーっていうか。
 ぶっちゃけ、好きな園芸して、カフェでも開けたらもう最高なんですがね。
 まぁ……無理だよねぇ!

 ここまできたらある程度腹をくくらないといけないのか。
 でも、どうにか逃げられたら逃げたいなぁ。
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