転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

第16話 水はけ対策と食文化向上委員会

 この間視察した北の村、メーズルさんのところは、この三ヶ月の間の降雨量が多かった。
 いや、多すぎと言っても良いだろう。

 それでも、雨の後にすぐに太陽が出たりしていたので、体感的に多いと感じている人は少なかった。
 野菜の成長的にも、悪くはなかったから、おそらく誰も気にしていなかったのだ。

 ただ、数字で見ると明らかに多い。
 降水量の目安のために、各地域に用意している水瓶の数値が、このエリアだけ図抜けているのだ。

「メーズルさん、ここの畝の横を深く掘って、排水を促したいわ。水はけが悪くなってるから、中にタケッティを入れて暗渠を作りましょう」

 私は畝の横を皆に掘らせた。その間に、若手を近くのタケッティ林に向かわせて、大量の本数を切り出させた。
 余ったら竹炭を作ればいいと思っているので――そういえば、竹炭ってここの世界で見てないな――ガンガン切り出すように指示する。

「イリスお嬢さま、このくらいの深さでどうでしょう」
「うーん、もう少し深いほうがいいわ。中にタケッティの束を入れるの」

 私の指示に頭にクエスチョンマークを浮かべながらも、彼らは指示されて動くことには慣れているので、再び穴を掘り始めた。

 やがて、タケッティを伐採しにいった人達が戻ってくる。
 おお! たくさん切って来たわね。よしよし。
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