転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「それをこの溝にいれて。そうそう。その上に麦の籾殻を撒いて。良い感じ! それをここの溝全部にやったら、土を被せていってね」

 この方法は、前世で地方の小さな町に派遣されたときに覚えた方法だ。

「これで水はけが良くなるの。今年は雨が多かったから、ここに水が貯まって、キュウリナの成長を阻害していたんだと思うわ」
 
 その地域の農家の方が、予算がないときにこういう方法をすると教えてくれた。調べたら、どうやら江戸時代からやっていた工法らしい。先人の知恵、ありがたいねぇ。

 私の言葉に、皆が頷き作業を続ける。
 人海戦術であっという間にできあがった。たくさん切ってきたタケッティも、全部使い切ったみたい。

 全体が埋まったら、今度はキュウリナの葉の間引きだ。
 この症状は過繁茂による日光不足も影響しているから、大きめの葉をきって風通しと光の道を作ってあげないといけない。

 キュウリナは、実の近くの葉っぱから栄養を取るので、実が近くにない葉っぱと、もう実をとった下葉は切ってしまって良いので、それを指示してあげる。

 こうした情報は、農家を続けていたら知っているものだと思っていたけれど、どうやらこの世界ではそうした試行錯誤はあまりされないらしい。
 専門家が指導したら、それをひたすら続ける、そういうものだとホロ爺に教えて貰った。
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