転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

　で、あれば私が領主の娘という立場を使って、バンバン収穫量が増える方法を教えていかないといけない。
　まぁ……いきなり信用してもらうのは難しいので、こうして少しずつ信頼を得て、今やっとこういう形で相談してもらえるようになってるんだけどね。

「お嬢さま、できました！」
「わぁ！　すっきりしたわね。これでこの後のキュウリナは多分大丈夫だと思うわ」

　私の言葉に、皆が盛り上がる。
　こういう風に、一緒に何かできるのって、本当に楽しいなぁ。
　そして、実は私が今やっていることが、もう一つある。

「ところでお嬢さま……。今回はこのキュウリナの活用法をなにか……」

　メーズルさんの奥さんが、キュウリナを手にそっと聞いてきた。
　そう。我が領地で採れる野菜の、調理方法だ。

　あまりにもテンプレ通りに美味しくない──いえ、味気のない料理が多かったので、ここは食に対して貪欲な日本人らしく、料理チートもしちゃおうじゃないの、というわけ。
　神さまに、料理チートも付けて貰えば良かったんだけど、あのときはそんなことは思いつかなかったんだよねぇ。

　というわけで、あくまでも私が知ってる範囲の家庭料理だけど、それでもほぼゼロベースな味付けよりはよほどいいよね。
　実は今、醤油や味噌については、我が家の庭で大豆──わかりやすく言えば、枝豆──を育てている。

　それを使って、醤油や味噌を生み出す予定だ。
　つまりは、そのうちさらに豊かな食生活が得られるはず……！　多分。

「そうね。今日は……」