転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 キュウリナは生のままサラダにして食べるのが、この国では一般的だ。
 そこで、今回はアレンジしておかずにしようと思っている。

「ポポークのお肉とキュウリナのウマ塩炒めを作りましょう!」
「炒めるのですか?」
「そんな、これに火を通すなんて考えたこともないです」
「それが結構美味しいんですよ」

 すでに我が家でお試し済みなので、安心して紹介できちゃうもんね。
 ちなみに、ポポークとは想像に難くないアレ、つまり豚肉みたいなもの。
 本当にこの乙女ゲーム、名称適当すぎる。これならいっそ、そのままの名称にしてくれた方が楽だったのに。

「ポポークの切れ端が多分あると思うので、それを少量の油で炒めます。その時に、ガガーリックと虎の爪も一緒にいれて炒めてください」

 場所をこの村の集会所のキッチンに移し、私が調理場に立つ。
 前はフェデルがやると言ってたんだけども、万一私が調理場で狙われた場合にフェデルが動ける状態の方が良いよね? と話したら、私が調理することを許可して貰えた。狙われたくはないけど、良かった。

 先にガガーリックと虎の爪を細かく切って油に入れる。もう、食材の名前の説明はいらない気がしてきた……。
 そしてそこにポポークの切れ端を入れる。ジュワーッと良い香りが、集会所に広がっていく。

「いいにおーい! なにつくってるのー」
「ぼくたちもたべられるー?」

 村の子ども達が、においに釣られてわらわらとやってくる。
 よしよし、美味しいものを食べさせてあげよう。この世界の食文化を、なんて大きなことは言わない。
 私の周りの人たちが、美味しいものを食べられれば、それで十分に幸せなのだ。
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