転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 くすくすと笑いながら、デリーの肩に頭を寄せる。
 彼は当然のように私の腰に手を回し引き寄せた。

 その様子を、周りの貴族が見てはため息をつく。
 仲が良い二人を見るのは、仲が悪い二人を見るよりも、こうした場にはふさわしいからね。

「ドレス、イリススタイルがそのうち王都でも流行るだろうな」
「その頃には、側妃派の女性陣は全員クリノリンを持っているわ。そして、そのクリノリンは私がオーナーをしている商店でしか売っていない」
「イリスのその対応、立派な王子妃ができあがってるな」
「そこが問題なのよね」
「ん?」
「んーん」

 第一王子という立場のデリーは、私が王妃になりたくないことはバレてはいる。ただ、私がそんなことを言ってもどうにもならないからね。
 でもなかなか覚悟もできず。悩ましいわぁ。

「よう、お二人さん。楽しんでるか?」
「アレ兄さま」
「アレウス義兄上」
 
 ワイングラスを片手に、アレ兄さまは陽気に私たちに話しかけてきた。アレ兄さま、お酒大好きなのよねぇ。しかも強い。
 このワインも何杯目なのかしらね。

「アレウス義兄上のご婚約者殿は」
「あいつは今、メルクリウの婚約者と一緒に、貴族令嬢達を籠絡しにいってるさ」
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