転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 デリーは第一王子だと言うのに──だからこそなのかもだけど、我が家では兄さま達と一緒に剣の稽古をしている。
 アレ兄さまが、筋は悪くないと言ってたので、兄さま達ほどじゃないにしても、腕はかなり良いのだろう。

「そういえば、メル兄さまと一緒に発酵グーツ石を仕入れに行ったじゃない」
「アジェスティに?」
「そうそう。お土産に貰ったムーンライトルビーを、どう加工しようか迷ってて」

 ムーンライトルビーとは、アジェスティ王国でしか採れないルビーで、通常のルビーが月の光を浴びると、その色合いが濃くなってまるで黒曜石のような深い黒色を見せる。まるで私の色とデリーの色が混ざり合ってるようで、すごく……その、エロティックだな、なんて思ってしまった。

 アジェスティ王国でも、滅多に産出されないらしいので、多分ものすごくお高い。さすが第一王子……。
 そんな石なので、信頼できる石屋に依頼して加工して貰おうと思ってるんだけど、そもそも何に加工するか迷っているのだ。

「やっぱり指輪? それともネックレス……ブローチ……」
「イリスにいつも付けていて貰いたいから、ネックレスが良いかな。農作業するときに、指輪だと邪魔になるだろ?」
「それもそうね。じゃぁネックレスにするわ。デザインはジョニュア女史に相談する!」
「うん。完成したら、僕に付けさせてね」
「……わかった」

 こういうちょっとしたところが、なんか、格好良いのよね。
 私ったら、いつの間にデリーのことこんなに好きになってたんだろ。
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