転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「大量に買い付けした発酵グーツ石は、もうすぐ届くことになるから、メルクリウ義兄上に仕込みを頼んである」
「そうなのね。果実酢以外にもちょっと使いたかったんだけど……」

 醤油や味噌を造るのに必要な麹菌。あれの代わりにならないか、と考えているのだ。
 
「いくつか、王都に送って貰おうか」
「あ! それが良いわ。向こうでは寮に入るから、週末に受け取れたら嬉しいな」

 そう。学校には寮があり、生徒は全員そこに入ることになる。
 侍女なども連れて行ってはだめで、学校側が使用人を用意しているんだって。

 これは、各家庭で虐待などが起きてないか、もしくは王家に対して妙な思想を植え付けてないか、などを監視するためらしい。

 確かに、貴族令嬢や子息は一人でお風呂に入るなんてこともないから、寮でも手助けが必要になる。
 そのときに学校側の採用している使用人がチェックをして、妙な怪我の跡がないかなどを、確認するのだろう。良いシステムだと思う。

 ……まぁ、プライドの高い高位貴族のご令嬢達が、侍女などを付けられないのをどう思うのかは分からないけど。
 私は記憶を取り戻す前から、野生児みたいだったしなぁ。

「学校に行ったら、図書室の本を一年の間に全部読んでみせるわ。きっと我が家にはない本もたくさんあると思うの」
「イリスは本が好きだよねぇ」
「大好き。だって、本を書いた人の解釈以外に、他人の解釈が入る余地がないんだもの」
「なるほど」
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