転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 勉強すること自体は嫌いではない。
 この世界のことは知らないことも多いから、それは楽しいけれど、教師の思想が入った情報に意味はあまりない。

 逆にその思想を知るために、教師に教えを請うことはある。
 でも純粋な知識としては、妙な思想や噛み砕きは不要だ。

 なんて、これは神さまからのチートがあるから、言えることなんだけどね。
 前世では、わかりやすい先生が大好きだったもん。

「じゃぁ、王城の図書室にも入れるように、手続きをしておいてあげるよ」
「えっ! ほんと? そんなことできるの?」
「イリスは僕の婚約者だからね。王子妃教育の一環とでも言えば、問題ないよ」

 第一王子の婚約者パスポート、強いな。
 そう言えば。

「私、王子妃教育とかで王城に通うことになるのかな」
「必要ないでしょ。やりたいなら教師を用意するけど、多分今のイリスが納得できる教師は少ないと思うよ」
「そんなことはないと思うけど」

 でもまぁ、知識だけを見たらそうなのかもしれない。
 実際にその知識をどう使うのか、どうやって役立てるのか。その方法を学べたら最高なんだけどなぁ。

「どっちにしろ、嫌かもしれないけど王城には何度か来て貰う必要がでるかもしれないから、それは図書室を堪能するため、とでも思ってよ」
「そう思うと、登城も嫌じゃなくなりそうだわ」

 つん、と彼の襟ピンを人差し指でつつく。
 デリーは笑いながら、少し困ったような顔で笑った。
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