転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

　私が言い返す前に、彼の背中を誰かが突いたようだ。
　誰か、なんて言わずとも、第二王子にこんなことができ、かつ私に対するこの発言を許さない人間なんて、一人しかいないけど。
　第二王子のあの発言の瞬間に、私を引き寄せたウェスタ兄さま越しに声をかける。

「デリー。早かったわね」
「うん。それでも遅いくらいだったよ」

　静かに背中のツボを押し込んだらしいデリーは、第二王子から手を離し、ウェスタ兄さまと交代した。
　しっかりとデリーが私を抱きしめるのを見た、クラスの女子達は、黄色い声を上げている。

「っ、いてて。おい、なんてことするんだよ」
「それはこっちの台詞だが？　僕の婚約者に、失礼なことを言ったのはお前だろ？」
「側室の息子に嫁ぐより、正妻の息子に嫁ぐ方が良いだろうが！」

「お前は今、その側室になれ、と言ったんだけどな？」
「うるさいな。俺の嫁になれるんだから、関係ない」

　私を放置して話を進めるな。いや、進めてるのは第二王子だけだけど。
　デリーも顔がちょっと怖くなってて、嫌だなあ。
　そもそも、なんで私を突然──あぁ、オモシレーオンナってやつか。

　ん？

　それってもしや、ヒロインちゃんが最初によく言われるやつじゃない？