婚約者様、「君を愛することはない」と貴方が乗り込んできたせいで私と貴方の魂が入れ替わってしまったではないですか!責任を取ってください
「リディア嬢! 君までカリーナ嬢を悪くいうのか! 見損なったぞ!」
「まだ何も言ってませんが」
まあ言わなくてもわかるくらい社交界でのカリーナ・プライウッド男爵令嬢の評判はよろしくない。問題はその評判が的を射てる……つまり殿方の前では酷く猫をかぶっているが、実は性格がどうしようもなく悪い事だ。さて、どうしようかしら。
「カリーナ嬢は純粋で優しい子なんだ。それを無責任な誰かが言った酷い噂のせいで傷ついてるんだぞ! 可哀相だと思わないのか?」
「どちらかと言うとローレンス様のおつむの方が可哀相ですわ。アルダー伯爵夫人には酷くご同情申し上げます」
「なんでこの話の流れで俺の母上が出てくるんだ!? それに今俺を侮辱しなかったか!?」
あら、このレベルの毒舌には流石に気づくのね。単純で頭の中が平和なお花畑で「ニ番手君」と陰で言われてる彼も、完全なバカという訳ではないらしい。
「あら、侮辱なんて」
続く「本当の事を言っただけなのに」という言葉を飲み込み、淑女らしく一応微笑んだつもりだけれど……ローレンス様の顔色が変わったところを見ると逆効果だったかもしれない。私のキツい目つきに薄い唇で微笑むと、悪だくみをしているように見えなくもないから。
「……き、君は態度を改めた方が良い。そういうキツい事を言ったりするから――――」
彼は苦虫を嚙み潰したような顔で言う。ハイハイ。どうせ見た目も性格も恐ろしいとか、怪しい薬を作ってる魔女だとかって言うんでしょう。
確かに私は歯に衣着せぬ物言いもするし、見た目も相まって愛想も良くないし、女の身だというのに社交界よりも魔法薬の研究の方に熱をあげているから可愛げもない。だからプライウッド男爵令嬢とは別の意味で評判が悪いし社交界で浮いててボッチなのは自分でもわかってるもの。
「――――君は皆に誤解されてるんだぞ!」
「……え」
予想外の言葉に思わず目を見開いてしまった。いや、確かに誤解されている面も多々あるけど。少なくともローレンス様はそれらを鵜呑みにはしていないと言うこと?