婚約者様、「君を愛することはない」と貴方が乗り込んできたせいで私と貴方の魂が入れ替わってしまったではないですか!責任を取ってください

「ど、どうすればいいんだ!? 戻れるのか?」
「同じ理屈で薬の割合を変更したものを調合すれば(ある)いは……」
「或いはって、上手くいかない場合はどうなる!?」
「責任を取ってください」
「責任?」

 私は私の顔をした婚約者様を真っ直ぐ見据えた。

「このまま、リディア・オークとして私のふりをして過ごしてください。どっちみち薬が完成するまではそうしていただかないと困りますの」
「何故だ!」
「夢幽病の治療薬のことは秘密だからです。婚約者の貴方にもお伝えしていなかったでしょう? これはオーク伯爵家の人間と、夢幽病患者しか知り得ない極秘事項なのですわ」
「む……無理だ」
「無理ですって!?」

 私が睨むと、ローレンス様は眉を目一杯へんにゃりと下げた。うわっ、この顔の私、ブスね。普段もお世辞にも美しいとは言えないけどこの表情はヤバいわ。

「だって俺、秘密とかそういうの苦手なんだよ! 黙っていようと思えば思うほど、その事を考えて……いつかうっかり言ってしまいそうだ!!」
「「「ああ……」」」

 私と兄と父から同時に同じ言葉が漏れた。確かに彼ならやりかねない。
 ローレンス様は悪い人じゃない。寧ろとても良い人だと思う。だけど秘密とか腹芸とかとは明らかに無縁だもの。逆に他人を疑うこともないから、私の研究内容は植物の栄養剤か何かって事にしておけば結婚してもバレないかもとすら考えていたのだったわ……。

「で、でもそこを頑張ってください! 大丈夫です。私は友達がいないボッチなので、あとは使用人にバレないようにしていれば問題ありません!」
「それだって自信が無い……」

 涙目のローレンス様に、お父様が喝を入れる。

「ダメだ。これは任務だと心得て、死ぬ気であたっていただこう。無理なら死あるのみだ」

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