好きを教えて、生意気なきみ
「本当になぎささん…?」

「おう。小原 渚(こはら なぎさ)だ」

「美しい名前に似合わない性格…」



思わずぼそっと言ってしまう。



てへ!



でも本当だもんね。



「悪かったな」

「ごめ~んね?」

「ハハッ、あやまる気ゼロだな」



渚がそう言って笑った。



うわ、笑った顔初めて見た。



やっぱイケメンではあるな…。



「読んでみる?」

「なにを?」

「あなたと同じ名前の小説」

「へ~、そんなんあんのか」



探し出した本を渚に手渡した。



パラパラとめくる渚。



「ふーん、良さげだな」

「借りる?」

「ありだな」



ありなんだ!



好きな本を借りてもらえるということであたしは嬉しくなった。



ちょっといいやつな気がしてきたよ。



って、あたしチョロい?



「はい、貸出期限は1週間で~す」

「了解」



『渚』の貸し出しカードに『小原 渚』の文字が書かれる。



変な感じ~。



それから渚はしばらくその本を読んでた。



図書委員の仕事もちょっとはしてほしかったけど、好きな本を読んでくれているので大目に見ることにした。



それから2時間して、ようやく今日の貸し出し時間は終了。



「帰るよ~」

「はいはい」



電気を消して戸締りをして、職員室に図書室の鍵を返すところまで渚に教えた。
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