好きを教えて、生意気なきみ
「ほら、しっかり立てよ」



そう言って、あたしの手を自分がつかまっていたつり革につかませようとする。



でも頑張らないと届かない身長…。



「…あんた改めて背低いな」

「悪かったね…」

「ったく…しょうがねえな」



そう言って、あたしの腕を、自分の腕につかませた。



えっ…。



急な優しい態度に思わず動揺してしまう。



「なに?」

「いや~…意外なことに優しいなと…」

「意外? 失礼な奴だな」

「あんたに言われたくない!」



でも、ちょっとドキドキしてる心臓。



って!



この節操ない心臓は!!



男の子にちょっと優しくされただけでドキドキするんじゃないよ!



自分の心臓に腹が立ったあたしは、自分の胸をペチペチと叩いた。



「…何やってんの?」

「べ、べつに…」



なんか引かれてるし…。



別にこんなやつに引かれてもいいもんね!



「分かりやすかったり訳わかんなかったり、面白いなお前」

「へ!?」

「変な奴」



そう言ってまた笑う渚に、やっぱり心臓はドキドキしてしまった。



「ん、最寄り駅着いた」

「あ、ありがと…」



そう言って腕から離す手に寂しさを覚えちゃったりして…。



バカだな、あたし…。



「じゃーな、また来週」

「ば、ばいばーい」



そう言ってしまった電車の扉。



あたしはなんだか一気に疲れてしまった。



茜…あたし、もしかしてちょっとだけやばい…?
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