好きを教えて、生意気なきみ
「陽鞠のこと振るやつの気がしれないな~?」



弥玖がそう言ってあたしに笑顔を向ける。



キラキラまぶしいなあ…。



大好きなお兄ちゃん。



「じゃあ、気を付けて帰れよ~」

「うん、バイバイ!」



弥玖に手を振って別れる。



それにしても、また彼氏いなくなっちゃった。



つまんないな~。



「ただいまー」



誰もいない家に一人声をかける。



両親は共働きで、小さいときから忙しそうだった。



『家に誰もいなくても、家に子供だけって悪い人にバレないように、帰ったらただいまを言いなさい』



そう言われて育ったあたしは、今でも必ず帰ったら誰もいなくてもただいまを言うようにしている。



中1の弟・風里(ふうり)は今頃塾だろう。



あたしと違って風里は勉強が好きらしくて、自ら塾に通ってる。



中1なんて勉強してた記憶一切ないや…。



なんか恋愛ばっかりしてた気がする…。



そのせいかあたしの成績は全然良くない。



テスト前には弥玖が勉強を教えてくれるから、そのときだけ勉強するんだけど、弥玖に意識が集中してるからかテストの結果は普通に悪い。



でも宿題はきっちりやる派なので、家に帰ったあたしは自分の部屋できちんと今日の分の宿題を進めた。



「ただいま~」



宿題が終わった頃にお母さんが帰ってきた。



「お腹すいた~?」

「ううん。それより聞いてよ~、今日振られちゃった」

「また~? 付き合ったばっかりじゃなかった?」

「『なんか違う』んだって~」

「何それ!」



お母さんもパパと付き合う前は恋多き女だったらしい。



だからあたしの話も結構共感して聞いてくれる。



あとどうでもいいけど、あたしは母親のことを『お母さん』、父親のことを『パパ』と呼んでる。



風里が『母さん』『父さん』と呼び始めた頃に、あたしもつられて『お母さん』と呼ぶようになったんだけど、パパは『パパ』呼びをやめたら悲しそうな顔をしてたのでパパのままだ。
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