好きを教えて、生意気なきみ
夏休みの図書委員の仕事はこれといって大してやることがない。



暇だ…。



暇なので、さっきの補講で出された宿題をすることにした。


「渚は夏休みの宿題しなくていいの?」

「俺はもう終わった」



早くない!?



まだ夏休み入って2週目だよ。



やっぱ頭いいんだ…。



あたしなんて補講の宿題ですら一苦労なのに…。



あたしが勧めた本を読む渚をしり目に、あたしはせっせと数学の宿題に取り組む。



「そこ間違ってる」



ちらっとあたしの宿題を見た渚があたしに指摘した。



「へ?」

「これはこっちと一緒に括らないといけないだろ」



なんで2年の問題なのに1年に教えられてるんだろう…。



情けないな…。



「違う、こことここを代数にするんだよ」

「うーん?」

「基本がなってねえな。基本から教えてやるよ」

「ちょっと待って。1年生に教えられるあたしの立場は?」

「そんなもん知るか」



はい…。



おとなしく渚に教えられるあたし。



なんか分かりやすいし…。



「はい、今日はここまで」

「ありがとうございました…」

「じゃあ帰るぞ~」



夏休みは閉室時間も早い。



バッグを持って帰る渚に、あたしもそそくさと準備をしてついて行った。



夕方の駅までの帰り道を2人で歩く。



「渚ってなんでそんな頭いいの?」

「別に。まあ勉強するの好きだしな」

「勉強が好きとかあるんだ…」



そんな話をしていたら、車道側を歩いていたあたしの脇から車が迫ってきた。



渚があたしの腕をぐいっと引いてあたしを歩道側に入れる。



「ありがと…」

「目の前で轢かれたら夢見悪いからな」

「もー、またそんなこと言う!」



そう言って肩をパンチした。



ははっと笑った渚。



それから、あたしの後ろに「あ」と目をやった。
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