好きを教えて、生意気なきみ
何も言い返せないあたしに、渚が視線をやる。



それから渚はアイスを食べながら佐々木くんに「あんたこそ、こいつにまだ未練ある感じじゃん。中学からずっととかダセェな」と言い放った。



「はあ!? ねえよ未練なんか!」

「じゃあなんでこいつの最近の恋愛事情まで把握して文句言ってんの? お前に関係なくね?」

「それは…ムカつくからだよ! 色んな男に媚び売ってよぉ」

「それは嫉妬じゃね?」

「はあ? ちげえよ! もうダルい、いいわ」



そう言って佐々木くんは行ってしまった。



良かった…。



心なしかちょっと手が震えてる。



怖かった…。



渚が、そんなあたしを見て、食べ終わったアイスの容器を脇に置いた。



それからあたしの目の前に座って、手をそっと包んでくれる。



あったかい手…。



震える手が、徐々に落ち着きを取り戻し始めた。



と同時に、あれ…なんか目から涙が…。



ポロポロとあふれ出したそれは、なぜか全然止まらない。



「やだ…何これ…」



自分でもわけわかんない。



わけわかんないけど…あたし、さっきの佐々木くんの言葉に多分…傷ついたんだ…。



「大丈夫、大丈夫だから」



渚がやさしくそう言って、片手であたしの手を包んだまま、あたしの頭をそっと撫でた。



それをきっかけに、もっと涙は止まらなくなって…。



「あたしってやっぱりおかしいのかな…。こんなぽんぽん人のこと好きになって、それでも弥玖弥玖って追いかけて…」

「…」

「自分でも嫌んなるよ、わけわかんないもん、こんな自分…」



小さいときからずっと恋愛ばっかりしてた。



弥玖のこと埋めようとしてたのか分からないけど、なんかもう癖みたいになってて。



おかしいよね…。



泣き止まないあたし。



渚は立ち上がって、困ったようにあたしの頭を自分のお腹に押し付けた。



そして、優しく背中をポンポンと叩いてくれる。
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