好きを教えて、生意気なきみ
「それでも本当はずっと、弥玖ってやつのことが心の中心だったんだろ?」

「うん…」

「だからお前はピュアで一途な奴だよ」



優しいんだね、渚…。



そうやって言ってくれると、なんだか本当に自分がピュアな子に思えてくるよ。



しばらくそうしていた。



辺りも暗くなってくる。



あたしは渚のお腹から顔をあげた。



ちょっと落ち着いたよ…。



「あら…シャツに鼻水ついちゃった」

「だな…」

「ごめんね? 洗濯して返すからちょーだい」

「お前俺に服脱いで帰れっつーのか?」



てへ!



なんか元気出てきた気がする!



渚のおかげだ。



「じゃあそこの水道で洗い流してから帰ろう」



渚を引っ張って水道まで連れてきて、水で洗い流した。



ちょっと濡れちゃったけど、夏だからすぐ乾くでしょう。



「渚…ありがとね」

「別に…なんもしてねえよ」

「照れちゃって」

「照れてねえよ!」



なんてね。



渚のおかげで自分のそういうコンプレックスみたいなものがちょっと晴れたような気がして。



なんか、渚にまっすぐあたしのこと受け止めてもらったから、これからはもう簡単に人のこと好きになったりしないんじゃないかな、なんてって思ったりした。



それから一緒に電車に乗って。



一緒に電車に揺られる帰り道がなんだかくすぐったい。



「もう乾いたね、シャツ」

「そうだな、夏だし」

「涙も乾くの早いよね、夏だし」

「何言ってんだ?」



ほんとに何言ってんだろう…。



なんて言っていたら、もう渚の最寄り駅。



なんか別れるのが寂しかったりなんかして…。



って、あれ?



なかなか降りない渚。



そうしてる間に電車のドアが閉まった。



「渚?」

「ん~」



もしかして…家まで送ろうとしてくれてるの?



茜、あたし、渚のこと、恋愛とは違う意味でちゃんと好きになったよ。



だけどやっぱり…そんな行動にはちょっとドキドキしちゃうかも…。
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