好きを教えて、生意気なきみ
あたしは、渚の肩にポンと手を置いた。



渚がうっとおしそうに手をはらいのけた。



「そうだ陽鞠ちゃん、何かおすすめの本ある?」



尚先輩があたしに聞いた。



おすすめの本聞かれるのは大好き!



「どんなジャンルの本が好きですか?」

「ん~、なんでも読むよ。陽鞠ちゃんの最近のおすすめを教えて」



だったら絶対『渚』かな~!



あたしは、司書室のテーブルに置いてある『渚』を持ってきた。



また借りて読んでたんだ。



先輩に特別に貸してあげよう。



「渚、これ返却処理して先輩に貸してあげて」



そう言って渚に渡す。



「…」



渚は、あたしの本をちらっと見てから、その本をあたしに返してきた。



えっ、どういうこと?



「それまだお前が読んでるやつだろ」

「そうだけど、何回も読んでるからいいの」

「いいから、貸すならほかのやつにしろよ」



なにそれ…?



訳の分からない渚の発言に、先輩と顔を見合わせた。



「まあいいけど…。じゃあ~これとかどうですか?」

「面白そうだね。読んでみる」



訳の分からない行動はそれからも続いた。



週明けの朝、学校に向かう道でたまたま尚先輩と会った。



「尚先輩~」

「お、陽鞠ちゃんおはよう」

「おはようございます!」



尚先輩と並んで歩く。



尚先輩がさりげなく車道側を歩いてくれる。



雰囲気が弥玖に似てるから、ついドキッとしちゃうよね~…。



前だったらもうここで好きだと思っちゃってたかも。



もうそんな簡単な心にはならないもんね~。



「この前おすすめしてくれた本、まだ途中だけど面白いね~」

「あれほんといいですよね~。最後のシーンとかめっちゃいいですよ!」

「ネタバレ禁止~」



尚先輩はほんとにしゃべりやすい。
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