好きを教えて、生意気なきみ
「陽鞠だよー。お届けものに来ましたー」

≪ありがと~≫



そして玄関先に玖麗ちゃんが出てくる。



「いつもありがとう~。今ちょうどお客さんが来てるんだけどね、よければ上がって」

「ありがと!」



そう言って遠慮なく家に入る。



ゆったりとした、広くて綺麗な家。



「お客さんって?」

「あ、あのね、弥玖の…」



玖麗ちゃんがそこまで言ったとき、リビングから弥玖が出てきた。



「お、陽鞠じゃん~」

「弥玖~! 修学旅行のお土産持ってきたよ」

「ありがと」



そのとき…。



弥玖の後ろから、ちょこんと人影が見えた。



えっ…。



「あ、ちとせ、この子、いとこの陽鞠」



ちとせと呼ばれたその女の子。



長い黒髪が綺麗な、色白の美少女…。



「弥玖くんの彼女のちとせです」



そう言って、あたしにぺこっとお辞儀した。



彼女…。



呆然と立ち尽くすあたし。



これが、弥玖の彼女…。



ど、どうしよう…。



どう立ち回っていいか分からなくなったあたしは、「そういえば用事思い出した!」と言って、タッパーを玖麗ちゃんに押し付けて、逃げるようにして弥玖の家を出た。



弥玖の彼女…。



ぼーっとさっきの光景を思い出す。



彼女…めちゃくちゃかわいかったな…。



あ、お酒持って帰ってきちゃった…。



手に持ったままのお酒を見つめた。



飲んじゃおうかな…。



そのとき、あたしのスマホに通知が鳴った。



見ると渚から。
< 36 / 75 >

この作品をシェア

pagetop