好きを教えて、生意気なきみ
『なあ、今お前が送ってくれた写真見ながら渚読み返してたんだけど、この写真このシーンのじゃね?』



そう言って小説の中身の写真が送られてくる。



主人公が大事なものを海に投げ捨てて、新しい道に踏み出すシーン。



なんだか渚に会いたくなった。



無意識に渚に電話をかける。



≪…なに?≫



すぐに渚が出た。



「渚ぁ…」



渚の声が聞こえたらなんだか力がどっと抜けて、泣きべそをかいたみたいな声を出す。



≪えっまじでなに…?≫

「今から会えない…?」

≪はあ? なんでだよ≫



渚に今起きたことを説明した。



渚は全部聞いてから、≪…しょうがねえな≫と言った。



「ありがと…」

≪ちょっと待ってろよ?≫

「うん…」



それから公園でしばらく待ってると、あたしに近づく足音が聞こえた。



ぱっと顔を上げると、渚が呆れた顔で立っていた。



「渚…」

「はあ…。世話かけやがって…」

「ごめん…」

「大丈夫か?」



渚があたしの隣に腰を下ろした。



それからあたしの顔をじっと覗き込む。



急なことでなんだかどきまぎしてしまう。



「なに…?」

「泣かねえんだなーと思って。前んときはめっちゃ泣いてたじゃん」



たしかに…。



はじめて渚に会った日、あたしは弥玖に彼女がいるって知って初対面の渚の前で大泣きしたんだった。



今日はなんでか涙は出ないな…。



「なんだよこれ」



渚はそう言ってあたしの手元にあるお酒を見る。



「お酒。本当は弥玖の家に置いてくるはずだったんだけどね。一緒に飲まない?」

「…付き合ってやるよ」



よーし。



5本くらいあるうちの2本を開けて、片方を渚に手渡した。
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