好きを教えて、生意気なきみ
だめだ、その声が、その腕が、怒っているのに甘く感じる…。



渚のことを、好きだと体が教えてくる…。



絶対認めたくなかったのに…。



そのとき、渚の腕を尚先輩がつかんだ。



「陽鞠ちゃん、体調悪いって言ってるじゃん」

「先輩は関係ないでしょ」

「いいから」



そして、尚先輩が渚の腕をやんわりとあたしから外した。



ありがたい…。



「陽鞠ちゃん、帰ろ」

「あ、え、はい…」



渚、ごめん!



でもやっぱり今一緒に仕事なんてできない…。



あたしが渚のことを好きで、その気持ちで渚のことを振り回すわけにはいかないもん…。



それに、この気持ちは伝えられない。それはあまりにもあたしが苦しい。



尚先輩と一緒に帰り道を歩いた。



「さっきはありがとうございました…」

「ん-、なんかよく分からないけど、渚くんと何かあったの?」

「はい、まあ…」

「話聞くよ?」



聞いてもらっちゃおうかな…。



尚先輩ならフラットな気持ちで聞いてくれそうだ…。



近くの公園に尚先輩と入った。



何気なくベンチに座る。



あたしは尚先輩に、この前あったことを全部伝えた。



あたしの恋愛病についてと、だから今回の渚の件もきっと一時の気の迷いだから渚と距離を開けたいことも。



尚先輩はずっとあたしの話を聞いててくれる。



全部話し終わると、尚先輩はあたしの頭を優しく撫でた。



「陽鞠ちゃん」

「はい…」

「俺にしといたら?」



ん…?



なんですって…?



目を見開いて尚先輩の顔を見た。



尚先輩は相変わらずニコニコしている。
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