好きを教えて、生意気なきみ
「陽鞠ちゃん、俺のためにもさ、もう渚くんから逃げるのはやめな? 自分の気持ちに正直になって」

「先輩…」

「さ、帰ろうか」



そう言って先輩は立ち上がった。



あたしも一緒に立ち上がる。



そのまま先輩とは特に会話もないまま駅まで一緒に帰った。



渚から…逃げちゃダメだよね…。



ちゃんと自分の気持ちに向き合わなきゃ。



それから土日の間、あたしはずっと渚のことを考えていた。



こんなに一人の男の人のことだけを考えるのって初めてかもしれない…。



渚とのメッセージのやり取りをぼーっと見る。



やっぱり好きだ…。



でも、この気持ち、いつもみたいに冷めちゃうんだろうか…。



そんなの嫌だ…。



そう思うとなんだかちょっと涙が出てきて。



渚に会いたい…。



それから月曜日がやってきた。



今日は2学期の委員会の初回の集まり。



あたしは2学期も図書委員だけど、渚はいるはずないよね…。



そっと教室に入る。



渚の姿は…ない。



そりゃそうだ…。



「はーい、2学期の図書委員をはじめまーす」



先生のやる気のない声が教室に響く。



そのとき、教室のドアががらっと空いた。



目を向けると…。



「渚…」



うそ…。



なんで…。



「遅れてサーセン」

「もう~ダメでしょー。遅れた罰で、小原くんの曜日当番、金曜日にしちゃうよー」

「分かったよ…」



渚がそう言ってから、教室の中に入り、あたしの隣にドカッと腰を下ろした。



あたしは渚の方を見た。



渚は、なんとも言えない表情であたしを見ている。



怒っているような、切ないような…。



渚…。



あたし、渚のことが好きだよ…。
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