好きを教えて、生意気なきみ
「ここで飲むなよなー。バレたら俺まで疑われんじゃん」



そう言って上からあたしの目の前に降り立った。



それからあたしの手からひょいっとお酒の缶を取り上げて、排水溝に中身をドバドバと流す。



「あ~…まだ全部飲んでないのに…」

「ほら、返す。バレんなよ?」



ゴミを渡されてしまった…。



「誰…ですか?」



あたしはとりあえず目の前の眠そうな顔をした男の子に聞いてみた。



背は低身長のあたしと比べてもかなり高いけど…上履きの色的に1年生かな。



「誰でもいいだろ」

「何それ! あたしのヤケ酒を奪ったからには名乗ってよ!」

「振られてヤケ酒ってわけね…」



振られ…。



振られたのか、あたし…。



告白もしてないけど…。



思い出したらまた泣けてきた。



ぐすんぐすんと鼻をすするあたしに、その男の子はぎょっとした顔。



「だって~…」



そのままあたしはなぜか、初対面のこの男の子にその場でペラペラと弥玖のことを喋りまくった。



そのまま1時間くらいしゃべり続けたかな…。



あたしが一息つくと、その男の子は「…もういいか?」と困った顔。



「うん…すっきりした…。初対面なのにすみません…」

「こんな経験はじめてだ…」



ですよね…。



にしても…。



「あなた後輩だよね? なんでタメ口なの!? 失礼!」

「初対面の男にいきなり自分の失恋話する奴から失礼なんて言われたくねえよ…」



な、生意気~…。



結局名乗りもしないまま、その男の子は屋上から出て行ってしまった。



なんなんだ…。



お酒もないし…。



酔えなかったし!



でも確かにこれで酔って学校にバレたら退学だったので良かったのか…。



絶望で我を忘れて人生棒に振るところだった…。



危ない危ない…。



あの生意気な後輩にちょっとだけ感謝…。
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