好きを教えて、生意気なきみ
あたしと渚はそっと見つめ合う。



観覧車は一番高いところに来たみたい。



き、キス…だよね?



ドキドキする心臓と期待する胸。



渚のことをじっと見つめた。



そんな渚は、あたしに顔を近づけて…。



ふっと笑ってあたしの頭をぐしゃぐしゃに撫でてから体を離した。



あ、あれ?



キスは…?



そのまま何もされず、観覧車は一周した。



消化不良のあたし…。



「ほら」



先に観覧車から下りた渚は、あたしに手を差し出して降りるのを手伝ってくれる。



よろけながら観覧車を降りる。



「よし、帰るか~」



うそ!



あたし、この前から一回もキスされてないよ…?



キスにとりつかれてしまったあたしは、それから渚との話も上の空。



そのままあたしの最寄り駅に着いた。



「家まで送ってく」



そう言う渚と一緒に、家までの帰り道を歩いた。



渚となにかを会話をしてたらあっという間に着く家。



「ん、じゃあな。今日はありがと。楽しかった」



そう言ってあたしの頭を撫でた渚は、あたしに背を向けて歩き始めた。



あたしは思わず渚のカーディガンの裾をつかむ。



「なんだよ?」



そう言って振り向く渚。



あたしは、渚に歩み寄って渚を見上げた。



「今日…キスされてない…よ?」



言っちゃった…。



は、恥ずかしい…。



でも耐えられなかったんだもん…。
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