好きを教えて、生意気なきみ
こんなに誰かとキスしたいと思うのは初めてだ。



渚はあたしのその言葉に、にやっと笑った。



それからあたしに一歩近づいて、あたしの顎に手をやった。



「ふーん?」

「なに…」

「べつに? かわいいなと思って」



やっぱあたし、渚にもてあそばれてる…?



あたしは頬を膨らます。



「なんでずっとキスしてくれなかったの…?」

「待ってたわけ?」

「ま、待ってた…」



渚は相変わらずにやにやとしたまま。



もう!



遊ばないでよ!



「陽鞠チャンがあまりにも惚れっぽいので、他に靡かないように焦らしてみました~」

「なにそれ…」

「今、俺とのキスのことで頭いっぱいだろ?」

「そ、そんなこと…」



あ…る…。



「でももう靡かないよ!」

「そうか?」

「うん。絶対」

「じゃあそっちからキスしてきたら?」



渚が意地悪な顔でそう言う。



む~…。



でももうキスしないとあたしが耐えられない…。



あたしは、渚の顔に両手を添えて、ちょっと背伸び。



もう少し…。



そのとき…。



「ひま…り?」

「パパ…」



仕事帰りのパパが立ってる…。



あたしは硬直。



パパに見られるなんてそんなことある!?
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