好きを教えて、生意気なきみ
「…ってことがあったの」

「うわ~、パパかわいそー。溺愛してる娘のキスシーンなんて結婚式以外で見たくないよ」



今日は球技大会。



あたしは、自分のクラスの男子バスケの試合を応援しながら茜にこの前あったことを話す。



茜はスポーツドリンクをストローでチューチュー吸いながらあたしの話を聞いてくれる。



「で、結局それからキスしてないの?」

「そうなの~…。なんかタイミングもないしさ…」



あれ以来なんか外でするのも気が引けるし…。



「あたしは昨日もしたけどね、彼ピの家で」

「聞いてないよ!」



あーあ、みんな一体いつキスしてるんだろう。



っていうかあたしはいつからこんなにキス魔人になったんだろう…。



渚はしたくないのかな…。



なんて考えている間に、男子バスケの試合が終了した。



「やったー、勝った~」



近くにいるクラスの子たちとハイタッチする。



次はあたしたちの女子バレーの試合だ~。



そのとき、あたしは何かにつまずいてこけそうになった。



「ったぁ~…」

「大丈夫?」



茜が心配してくれる。



って、後ろからなんかクスクス笑い声が聞こえる…?



ばっと振り向くと、一年生の女の子3人組が笑ってた。



なんか一人見覚えが…。



あっ、この前司書室に渚に会いに来た子だ…。



え、なに…?



「陽鞠、どしたの?」

「いや~…なんだろね…」



いやがらせ…?



まあ気のせいかもしれないし…。



だけど同じようなことがそれからも続いた。



試合に負けたあたしたち。



次は渚のクラスの男子ハンドボールの試合があるから見に行こ~。



そう思って外に行く。



ドンッと後ろから人にぶつかられた。



そのまま昨日の雨でぬかるんだ地面に転んだあたしは泥まみれ。



「あっ、すみませ~ん」



さっきの子だ!



絶対わざとじゃん!!



なに、渚のファン!?



遠くにいた渚が、あたしに気が付いて走ってきた。



「どうした? 大丈夫か?」



そう言って泥まみれのジャージを脱がせ、自分のジャージをあたしに貸してくれた。



「なんか渚に変なファンついてるよ…」

「どういうことだ?」

「あの子…」



あたしはそう言ってあっちに行ってしまったその子を指さした。
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