好きを教えて、生意気なきみ
「あいつに何かされたのか?」

「うん…なんか足引っかけられたりぶつかられたりした…」

「チッ」



渚が舌打ちした。



それからその子のところに行こうとする。



そのとき、「渚~、そろそろだぞー」という渚を呼ぶ声がした。



渚が声の方を振り向く。



「やべえ…行かねえとだ。あいつにはあとで俺から言っとくから。ほかに怪我してねえか?」

「大丈夫! いってらっしゃい~。応援してるね!」



渚をひらひらと手を振って送り出した。



あたしは渚のジャージを着たまま応援席に行く。



渚の匂いに包まれて良い気分だ。



応援席に座ってたら、あの子からじっと見られた。



なんなの…。



そんなに渚のことが好き?



あたしの方が好きだもんね!



その子のことをにらみつけておいた。



そのとき、「陽鞠ちゃんだー」という声がした。



声のほうを見ると尚先輩。



尚先輩はあたしの隣に腰を下ろした。



あ、そうか、次の渚の試合は尚先輩のクラスとか…。



「どうしたの? そのジャージ」

「いやー、かくかくしかじか…」

「よく分からないけど大変そうだね」



そう言う尚先輩はいつも通りのほほんとしている。



って、あたしこの人に告られたんだった…。



距離を取ろうとするあたしを尚先輩が引き留めた。



「友達でしょ?」



うっ…。



そう言われるとなんとも断りづらい…。



まあいいか、何されるわけでもないし…。



「尚先輩はなんの試合出たんですか?」

「俺はバレーに出たよ。1回戦で負けたけど」

「あたしもバレーでした! あたしも1回戦で負けたけど…」



アハハと2人で笑い合った。



負け同士、おとなしく渚の試合でも見てよう。
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