好きを教えて、生意気なきみ
昼休みは何事もなく終わった。



「じゃあまた放課後ね」

「うい~」



うん、この調子なら大丈夫そう!



仲良くはなれなかったけど…。



そして放課後もやってきた。



帰りのホームルームが終わると、クラスの子たちは放課後の予定を立て始める。



「あたしもカラオケ行きたかった…」

「ドンマイ。あんたは生意気後輩くんと楽しんで~」



茜に泣きついたけど一蹴され、しぶしぶ図書室に向かった。



2学期は絶対金曜日にならない!



図書室に着くと、あいつは先に来ていて、司書室で眠っていた。



夕日が差し込んで、その寝顔を照らし出す。



うわ~、美形なだけあってなんか綺麗だな…。



思わず見とれていると、あたしの気配を感じたのかむっくりと起き上がった。



「あなたいつも寝てるね」

「ん~…」



眠そうだ…。



あたしは無視して仕事にとりかかった。



パソコンを見て、期限内に返却されていなかった本の返却状況を確認する。



あ、あたしが好きな本が返ってきてる!



好きな作者さんの小説で、『渚』というタイトルだ。



何回読んでも好きな本。



心にふわっと広がってなんだか優しい気持ちになれるんだよね。



また借りよーっと。



あたしは、図書室の棚の『な』行を探す。



「なぎさ…なぎさ…」



ぶつぶつと声に出しながら探す。



すると、あいつがこっちを見てきた。



なに!?



「…呼んだか?」

「うん? 呼んでないけど…」

「いま『なぎさ』っつっただろ」

「言ったけど…」



えっ、もしかして、あなたの名前、『なぎさ』ですか!?



あたしの好きな本と同じ名前の…。
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