婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

第1話:これが噂の「婚約破棄」でしょうか?

 満月が光り輝く夜。
 ここ、キアラ王国では「国立魔法学園の卒業パーティー」が開催されていた。

 この日、私をエスコートするはずのクリス王太子は、なぜか目の前で黒髪の少女と並んで私の前に立っている。しかも会場の中心で。


(何でしょう、この空気は……)


 煌びやかな装飾が施された会場と相反するように、水を打ったような静けさと異様な空気に包まれていた。

 私とクリス王太子、そして黒髪の少女に対して、全参加者の意識が向けられている。後ろの方で談笑していた者たちも、徐々に中央に集まってきた。


 私の背後からは、

「一体何が起きるんだろう?」

「なぜ殿下はエリアナ様ではなく、あの少女と一緒にいるのかしら?」

というヒソヒソ声が聞こえてくる。


 私がクリス王太子にエスコートされていない時点で注目の的だというのに。なぜ、さらに注目されるようなことが起きているのか、不思議で仕方がなかった。

 そしてクリス王太子は、この異様な空気と静けさに口火を切る。


「エリアナ、君との婚約は破棄させてもらう。昨日異世界から召喚した聖女、マリア・ササキと私は婚約することになった」

「はい……?」

「これは王家の決定事項だ。覆ることは無い」


(……あれ、これってお約束の『婚約破棄』!?)

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