婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
場所はまたしてもジャンさんの宿屋で、広間を貸し切って行われた。
ちなみに料理は、王族の専属料理人によって振る舞われることになっていた。一番それを楽しみにしていたことは内緒だ。
「今日のディナーは何が振る舞われるのかしら……」
「お嬢様、心の声が漏れ出ていますよ?」
「だって……ケイティだって楽しみでしょう?」
「私は侍女ですので、本来は同じ席で食べるのは阻まれるのですが……」
「あら、ケイティは侍女と言っても男爵令嬢なのだから。それに一緒に戦ってきた同士じゃない」
「そうおっしゃるのはお嬢様くらいかと……でも、今回はお嬢様の言う通り、参加させていただきますね」
「そうこなくっちゃ!」
その後、振る舞われた料理はとても豪華だった。
魚介を使ったパスタとパン、ラディッシュとレモンを使った白身魚のカルパッチョ、そしてワインと、この国の食文化が壊滅的なことを忘れそうなくらい気合いが入っていた。
不思議に思っていると、クリス様に声をかけられる。
「今日はエリアナがディナーを食べることを知って、うちの料理人達がかなり気合いを入れて作ったようだ」
「え、私ですか?」
「あぁ、君はこの国でちょっとした噂になっているからな」
「それはどういう……?」
「エリアナ・エンフィールド公爵令嬢は、美味しいご飯やパンを振る舞い国民から慕われている、と」
「まぁ! それは少し話が大きくなっておりますね。慕われるほどやっているつもりは無いのですが……」