婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

 そんな話をしながら、早々にご飯を食べ終え、各々がワインを片手に話していた。アンディと騎士団長のレオナルド様は、お互いの雷魔法や剣技について議論をしていた。そこにニール様も面白そうに話に乗っている。

 マリア様は推しのアンジェロ様に話しかけており、とても幸せそうだ。

 私は久しぶりにお酒を飲んだので、バルコニーに移動して夜風に当たることにした。


「エリアナ、ここにいたのか」

「クリス様。少し夜風に当たりたいなと思いまして」

「そうか、確かにここは気持ちが良いな」


 そう言って、クリス様が私の隣に立つ。こうして近くで二人きりで話すのは、とても久しぶりのような気がした。


「エリアナ、君は前から料理が得意だったのか? あの公爵殿が娘に包丁を持たせると思えないのだが……」

「え、えぇ……魔法学園を卒業してから、料理を練習したのです。思いほか、夢中になってしましまして」

「そうか、私が婚約破棄してから……」


 クリス様はいつになく、真剣な表情をこちらに向けた。


「エリアナ、私の側妃にならないか?」

「……へ? えぇっ!?」


(婚約破棄しておいて、次は側妃の打診!? し、信じられない……やっぱりクリス様は何も変わっていないわ……)


 異世界から召喚したマリア様は聖女としての力が出せておらず、瘴気も魔獣も収まっていない。それ故、クリス様の国民からの評価はかなり落ちていると耳にしたことはあった。

 名誉挽回のためなのか、よく分からないが……何と返事をしたら良いのか迷っていた時だった。
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