婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「エリアナが移動販売を始めた時、異物混入騒動を起こすよう指示したのは殿下ですよね? そのようなことをしておいて、しかも側妃の打診とは……少々虫が良すぎませんか?」
「カイ殿」
「カイ様……」
突然バルコニーに入ってきたカイ様が、静かに、でも怒気を含んだ挑発的な言い方でクリス様に話しかけた。
「それは証拠があっての発言か? 場合によっては王家に対する不敬になるが」
「もちろん証拠もあるが……クリス殿の発言もこちらに対する不敬ではないか? 私はマリン帝国の皇太子、カイル・フェザーだからな」
「なっ……マリン帝国の皇太子だと!?」
「それに、エリアナは私の婚約者だ。彼女の父上にも婚約の了承は得ている。私の婚約者にそのような物言いをしないで欲しい」
「婚約者、だと……?」
まさかの婚約者発言に呆気に取られていると、カイ様は私の手を取った。
「さぁ、私のお姫様。あまりヤキモチを妬かせないでほしい。二人で話そう」
「は、はい」
呆然とするクリス様をその場に残し、私たちはひと足先に宿泊している別の宿に戻った。戻るまでの間、カイ様にぎゅっと手を握られたままーー。
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