婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

第16話:カイル皇太子の想い


 私とカイ様が突然会場を出ていったものだから、そこにいた皆が「あれ?」となっていた。
 でも、カイ様はもちろんお構いなしで、察したアンディとケイティが皆に上手いこと伝えてくれたようだ。それは後で分かることなのだが……。


「エリアナ、二人で話しがしたいんだけど、ここで良いかな?」


 そう言って通されたのは、カイ様が宿泊している部屋だった。隙間時間に執務をこなしているのか、机の上には書類が積み重なっている。

 私は頷いて、案内されたソファに座った。カイ様は水魔法と魔道具を使い、自らお茶を淹れてくれた。


「まぁ! すみません、私が淹れるべきでした」

「いや、自分でもある程度出来るから気にしなくて良い」

「カイ様は何でも卒なくこなされますね……ありがとうございます」


 皇太子だから「全て侍女や侍従がやるのが当たり前」となってもおかしく無いのに、カイ様は自分で出来ることは自分でやるスタンスなのだ。それは凄いことだな、と改めて感じた。

 お茶を淹れたカイ様が、私の隣に腰を降ろす。


「まず、先ほどは急に会話に割って入ってしまって、すまなかった。でも、どうしても我慢できなかったんだ」

「我慢できなかったと言うのは……?」

「好きな女性が、他の男に口説かれているということが、かな?」


 こちらにニコッと笑みを向けながら、ストレートに言われる。カイ様に想われていること、そしてかなりのヤキモチ焼きであることが分かり、急に顔に熱が帯びた。


「クリス王太子に先に伝える形になってしまって申し訳ないけれど……私はエリアナのことが好きなんだ」

「カイ様……」

「エリアナにとって、この気持ちは迷惑かな?」
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