婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「はい、目の前の人が笑顔になってくれれば、それだけで私も幸せな気持ちになっていました」
「そうだろうね、君はそういう人だ」
『ククク』と喉の奥を揺らすように笑いながら、カイ様は話しを続けた。
「最初は料理に関係なく君の人柄を好きになったが、さらには胃袋まで掴まれてしまった。これからも、エリアナの作る料理が食べたい。
あ、これは料理人として君を好きになったという訳ではなくて、恋人として君と色んなことを楽しみたい、ということなんだが……」
「フフッ ありがとうございます。カイ様のためなら料理人にもなりますよ?」
「いや、だから、料理人ではなくて……そう聞こえてしまうのが嫌で」
カイ様が『恋人』と言ったあたりから、ごにょごにょと歯切れの悪い感じになってしまう。自分で言っておきながら照れてしまっているのが、可愛い人だなと思ってしまった。
ふと、先ほどのクリス様との会話で気になっていたことを思い出した。
「あ、カイ様、お父様に婚約の了承を得たと言うのは本当なのですか?」
「あぁ、婚約願いの手紙を出したのは本当だ。グラニットで再会した後に手紙を出して、その後も逐一報告の便りは送っている。
今回旅に出ることも、何かあったら私が自分の命に替えてでも守るからどうか見守って欲しいと伝えた。そうでないと、あの過保護な公爵では旅に出ることを許さなかっただろうな」
「まぁ……!そろそろお父様に連絡しなければと思っていましたが、カイ様が根回しして下さっていたなんて……本当にありがとうございます」