婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

 手紙のやり取りからも『過保護なお父様』が見て取れたのだろう。我が親ながら、少し恥ずかしくなってしまった。

 でも、私だけでなく家族のことまで考えてくれたことが何よりも嬉しい。そして隣国の皇太子が求婚したというのは、さすがに我が家も断れないと思うが……あのお父様が、すんなり認めたのだろうか?


「求婚に関して、具体的にどのようなお返事があったのですか?」

「公爵からは、『無事にエリアナを帰してくれたら結婚を許す』と言われたよ。まぁ、命に替えても守ると言ったし、無事に送り届けるのは当たり前だと思うから」

「お父様ったら、皇太子様に対してそのようなことを……申し訳ございません。でも、カイ様もマリン帝国で沢山お見合い話もあるのではないでしょうか? 例えば聖女様とか……」


 クリス様に婚約破棄された時のことを思い出して、少し気分が暗くなってしまう。

 あの時は自由の身になれてむしろ晴々とした気分だったが、カイ様に同じことをされたら耐えられないと思った。それに、彼は乙女ゲームの第二シーズンで主要キャラなのだ。


「エリアナ、まずは私が皇太子だったことを隠していたのは申し訳なかった。カイ・クロフトは偽名で、本名はカイル・フェザーと言うんだ。でも、愛称はカイだから、これからも今まで通りカイと呼んでほしい」

「分かりました、カイ様で良いのですね。隠していた件は理由があってのことでしょうし……でも、今も知っているのは限られた人だけなのですよね?」
< 108 / 138 >

この作品をシェア

pagetop