婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

「あぁ、でももう隠す必要はないよ。学園にいた頃把握していたのは、学園長と国王くらいだね。学生でいられる間は国のことは気にせず、自由に過ごしたかったと言うのもあるし……
 爵位が分からない者への対応を見て、相手の本質が見えると思っていたんだが」

「なるほど、そう言うことだったのですね」

「それと、エリアナを婚約者として迎えることは、マリン帝国の皇帝である父にも伝えてあるんだ。
 先に想いを伝えず外堀を埋めるようなやり方をして申し訳ないけれど……私にはエリアナ以外を妻として迎える気は無いから、もうお見合いは用意しなくて良いと言ってある」

「まぁ……!」


 他国の公爵令嬢を迎えると言うのは、喜ばれることなのだろうか? カイ様ははっきりと意思表示をしたものの、実際のところ皇帝の心中はどうなのか心配になった。
 でも、そんな頭の中もカイ様にはお見通しのようだ。


「エリアナ、心配しなくて大丈夫だよ。今までどの女性にも興味を示さなかった息子が、突然婚約者を見つけたと言い出したんだ。父は早くエリアナに会いたくて仕方が無いと思う。
 ……今回の魔獣退治が終わったら、私と一緒にマリン帝国に来てくれる? もちろん、婚約者として」

「……はい、ぜひ。これからもカイ様のお側にいたいです」

「そうか、ありがとう。……エリアナ、愛してる」


 そう言って、カイ様は私の唇にそっと優しく口付けた。初めてのキスは甘やかで、でも胸の高鳴りも止まらなくて、それら全ての感情を受け止めることにした。

 唇が離れたと思ったら、カイ様が真剣な表情で私を見つめる。


「絶対に、君を危ない目には合わせない」
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