婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

 魔獣は今にも飛びかかろうと、ジリジリと距離を詰めてきた。アンディやレオナルド様、クリス様は接近戦に対応できるよう腰の剣を抜いた。

 ニール様の掛け声で私とカイ様は、魔力を溜め始める。そして、魔獣に向けて一気に水魔法を放出し、消化していく。それぞれの魔獣の額から、魔石がポロッと落ちていった。


「アンジェロ、皆の治癒を頼む」
「はい、もちろんです」


 クリス様の指示で、アンジェロ様は私とカイ様、ニール様の魔力消費を癒していく。この後の魔獣の王との戦いが本番だから、何度も治癒魔法は使えないのだが。


「クリス様、もう治癒魔法を使って宜しかったのですか?」

「あぁ、いつどこから魔獣の王が現れるかも分からないからな。休める時に休んだ方が良い」

「そうですね。アンジェロ様、治癒頂きありがとうございます」

「いや、これが私の役目ですから」


 にこやかに返答するアンジェロ様を見て、マリア様が小さくため息をこぼした。


「はぁ、私もアンジェロ様や皆さんのように魔法で役に立てたら良いのに……無属性だとみんなのお荷物にしかならない……」

「マリア様……」


 そう思ってしまうのも、無理もない。無属性であれば魔道具や剣を使うくらいしか、戦う術がないのだ。光魔法が発現してくれたら、誰よりも一番価値があるのだが……マリア様にはその兆しもまだない。


「マリア様は希望の光ですよ。もしかしたら光魔法で、この国を平和に導けるかもしれないのですから」

「そうだと良いのですが……」
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