婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「下位の魔獣は、その辺の野菜とか植物を食べるんだけど。僕みたいに高位の魔獣ともなると、人間の負の感情を栄養にすることができるんだよね。
例えば怒り、憎しみ、妬み、嫉妬……そういうものが大好物なんだ。特に今は政治も貴族社会も腐敗している。
そこには負の感情が沢山渦巻いているから、たまに吸い取っては下位の魔獣達にも栄養を分け与えているんだ〜♪」
「な、なんだと……?腐敗している?」
「ほら、国民が美味しいものを食べられないのも一つの例だよ。貴族が魔道具や魔石を独占した結果、貴族の間では食文化が発展したかもしれないけど、それを遠目に見ている一般市民は不満が溜まっていく。
ま、僕は大好きな負の感情を得られるから、何も損してないんだけどね!」
クリス様は何も言い返せないのか、拳を強く握りしめてサタンを見据えている。
「まさに、そこにいる女の子の感情とか、最高だね〜! 本人は全く気付いていないみたいだけど」
「え、私!?」
「違うよーそっちの子!」
サタンが指差す方を見ると、そこにはマリア様が立っていた。本人もまさか自分に話が振られると思っていなかったようで、目を見開いて固まっている。
「ハハ、ちょっと小腹が空いてたし、早速その感情を栄養にしようかな! いただきまーす♪」
サタンが人差し指をくるっと回すと、マリア様から黒いもやのようなものが抜けていき、その場でパタンと倒れてしまった。
「マリア!」
「マリア様!?」
クリス様と私が駆け寄るが、呼吸はしている。意識を失っているだけのようだ。あれだけ前向きに、この世界で頑張ると言っていたマリア様がどうして……。