婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
 「聖女マリアと魔法の国」は有名な監督が手がけていたことや、キャラクターや魔法シーンの美麗なイラスト、聖女マリアを取り巻くイケメン達とのやり取りに、多くの女性が虜になっていた。


 私も仕事のストレス発散とばかりに、乙女ゲームをやっていた訳だが。ゲームのシーンをこの目で見てみたいという気持ちもあるものの、実際には魔獣との戦いもあり危険も多い。

 それに、自分はゲームの冒頭だけ出てくる「脇役令嬢」だったのだ。ここは大人しく、第二の人生を謳歌する方が幸せだろう。


***


「エリアナ様、そろそろご飯を食べに行きませんか?」

「あら、随分と時間が経っていたようね。 ご飯を食べに行きましょうか。グラニットにはどんな食べ物があるのかしら」


 私達は掃除がひと段落した段階で、街の中心地にある小さな食堂に向かった。

 食堂では野菜スープやパン、焼いたお肉などを食べることができるようだ。それらをオーダーして食べてみると、味気ないものばかりだった。


(そういえば、公爵家の食事も手の込んだものは少なかったかも。それ以上に、ここの食堂は食材を茹でたり焼いたり、簡単なものだけだわ。

 日本と同じような食材が揃っているのに、どうしてこんなに料理は質素で不味いのかしら……)


 今まではなんとも思わなかった食事に対して、前世で『食べるのも料理するのも好きだった自分』を思い出してからは、違和感ばかりだった。

< 12 / 138 >

この作品をシェア

pagetop