婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「あぁ、アンジェロ殿ありがとう、でも奴の動きが速すぎて回復が追いつかなさそうだ」
そうこうしているうちに、土でできた巨人のような物体が何体もこちらに向かって歩いてきた。
ニール様が「水魔法!」と叫んだのに対し、なぜかクリス様が強烈な火魔法で丸焦げにしてしまった。
「殿下! なぜ勝手なことを!?」
「その方が早いと思ったからだ! ニール達の体力が切れてしまうのは困る!!」
言っていることは尤もかもしれないが、チームワークが大事な場面で勝手な行動をしてしまうクリス様に影響を受け、皆の足並みがズレていくような感覚に陥った。
この時を境に、次々と技を繰り出すサタンに対して、集中力が切れた私達は技が的確に当たらない。ジリジリとした展開だった。
「あぁ〜すっごく楽しいな〜! みんなとっても強いんだね! でも、ここからが本番だよ♪」
何事か、とサタンを見ていると、徐々に瘴気が濃くなっていることに気がついた。これは恐らく……
「そう、この国では僕しか使えない、闇魔法だよ〜! 僕はこうやって徐々に追い詰めていくのが大好きなんだ」
ニヤリと笑いながら黒い靄が辺りに立ち込めていく。既に体力を消耗している私達は、この瘴気でさらに体の動きが鈍くなっていった。
アンジェロ様が頑張って治癒魔法をかけ続けるが、最初にケイティが座り込んでしまった。
「ケイティ!? しっかりして! 意識だけは保つのよ!!」
「お嬢様……」
私の側で守るように立つカイ様も、苦しそうな顔をしている。私も意識が持っていかれそうだが、なんとか踏みとどまった。